HYPER DiMENSiON

ジョジョ&犬好きフリーライターのフィギュアレビューブログ。お仕事随時募集中。Twitterもシクヨロです。
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ムック『ジョジョの奇妙な冒険 超像の世界 ACT.2』感想 

メディコスの超像可動シリーズをフィーチャーしたムック本『ジョジョの奇妙な冒険 超像の世界 ACT.2』を読みました。今回は「超像可動&スタチューレジェンド編」と題され、姉妹作であるスタチューレジェンドシリーズも取り上げられています。

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前号ACT.1では特別付録としてフィギュア「超像可動 DIO覚醒版・セカンド」が付属していましたが、ダダ余りして捨て値で投げ売られてしまったせいか(笑)今回は書籍のみ。あえて特典で釣らないスタンスにホビージャパンの「覚悟」を感じました。

事実、中身はディ・モールト(非常に)充実しており、単なるカタログでは終わっていません。
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商品紹介ページの写真はホビージャパン誌の再録ですが、複数のフィギュアを絡めて原作を再現した撮り下ろしの写真も多数収録されています。ジョジョファンならそれを眺めているだけでも楽しめるのではないでしょうか。

他にも超像可動の原型を手がける匠工房とPROGRESSのインタビューが収録されています。
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フィギュアを製作するにあたってのポイントや荒木先生との関わり方、今後の抱負(ラインナップ)についてなど、興味深い話が4ページにわたり綴られています。

個人的に一番驚いたのが、PROGRESSが3人で構成されていたということ。ずっと個人のペンネームだと思っていたのですが、グループ名だったんですね。

中の人がそれぞれ何を担当するかはケースバイケースで、一人のキャラクターを一人で手がけることもあれば、二人以上で合作することもあるとのこと。たとえばスタチューレジェンドのDIOの場合は「頭部」「胴体」「マント」でそれぞれ役割分担していたそうです。

その他付属品についての話や5部のキャラクターにパール塗装を取り入れた理由など、面白いエピソードがいくつもありました。シリーズファンならこのインタビューだけでもムックを買う価値ありです。

更に今後のラインナップの一部が本誌初公開されています。
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「超像可動 レオーネ・アバッキオ」「超像可動 キング・クリムゾン」「超像可動 ディアボロ」そしてお ま た せ「スタチューレジェンド ルドル・フォン・シュトロハイム」が写真付きで掲載。このあたりはワンフェスで展示されるでしょう。

あとはインタビュー内に「超像可動 ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム」を製作中の写真があります。
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他にも「ディオ・ブランドー(1部)」「ジョナサン・ジョースター」「ホウィール・オブ・フォーチュン」「メローネ」なども作ってみたいとインタビューで語られているので、近い将来実現するかもしれません。

自分はずっとホル・ホースを待ってるんですが、なんとかなりませんかね……。



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『荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟』感想 

荒木飛呂彦先生のエッセイ『荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟』を読みました。

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どんな本?

荒木先生といえば映画好きとして有名です。『ジョジョ』作中にも映画のエッセンスを数多く取り入れていることはよく知られていますが、本書ではそんな荒木先生が「サスペンス映画」の魅力を具体的な作品を挙げつつ200ページにわたって語っています。

映画への深い造詣と漫画家ならではの分析眼、そして「面白さ」に対する貪欲なまでの探求心により展開される持論はそのひとつひとつに説得力があり、映画ファンならずとも紹介されている映画をすべて観たくなること請け合いです。

参考までに、以下は本書に掲載されている「荒木飛呂彦が選ぶサスペンス映画 Best20」のラインナップ。

    1. ヒート
    2. 大脱走
    3. 96時間
    4. ミスティック・リバー
    5. 許されざる者
    6. サイコ
    7. 天国から来たチャンピオン
    8. シュレック
    9. ファーゴ
    10. ダーティハリー
    11. ボーン・アイデンティティー
    12. シティ・オブ・ゴッド
    13. 激突!
    14. アイズ・ワイド・シャット
    15. バタフライ・エフェクト
    16. マスター・アンド・コマンダー
    17. 運命の女
    18. フロスト×ニクソン
    19. バウンド
    20. 刑事ジョン・ブック 目撃者
    21. (次点)レザボア・ドッグス

自分はそれほど映画に詳しいわけではありませんが、それでも半数以上は知っています。前著『ホラー映画論』は扱うジャンル自体がカルトなため取っつきにくさが否めませんでしたが、今回はすんなり入り込めるのも魅力でしょう。

上記ラインナップの中には「これってサスペンスなの?」と疑問を呈する作品も混じっていますが、そういった作品を「何故あえてサスペンスとして挙げたのか」についても本書を読めば理解可能で、それもまた”読みどころ”のひとつだと思います。

どんな映画が紹介されてる?

本書で名前が挙がるのは上の21作品だけではありません。Best20に入っていない作品として、例えば『ジュラシック・パーク』や『ジョーズ』『タイタニック』などについても独自の視点で「サスペンスとしての魅力」が語られています。作品だけに留まらず、スピルバーグやデ・パルマといったクリエイターにもスポットが当てられ、荒木先生の映画へのディープな知識や愛がひしひしと伝わってきます。

……と、こう書くと有名な映画ばかりしか紹介していないように思われるかもしれませんが、決してそうではありません。Best20の中にもマイナー作品がチラホラ混じっているように、あまり知名度が高くなかったり、一般的な評価の低い作品のこともしっかり書かれています。B級映画ファンはご安心を。

映画に限らずマニアというのは極端なものでメジャーを貶してマイナーを持ち上げる傾向にありますが、荒木先生の場合は「メジャーでもマイナーでも面白いものは面白いし、駄作は駄作」というフラットなスタンスを貫いているのが素敵だなと感じました。

ただ『インデペンデンス・デイ』大統領が自ら戦闘機に乗り込んで宇宙人と戦う超展開を「思わず泣いてしまった」と語るくだりは流石に笑ってしまいましたが(笑)。いや、良い映画ですけどね。登場人物が大真面目に無茶苦茶な事をやるのが可笑しい、というのは『ジョジョ』にも通ずる部分があるかもしれません。

ジョジョとは関係あるの?

上でも書いたように『ジョジョ』という作品は映画の影響を多分に受けているため、本書にもそういった記述が散見されます。

たとえば荒木先生曰く「男が泣けること」が名作サスペンスの条件とのことですが、その「男泣き」を受けて誕生したのがSBRに出てくる「男の世界」でおなじみのリンゴォ・ロードアゲインなのだとか。確かにあの哀愁を感じさせる背景、世界観は泣けます。

他にも漫画で応用した映画演出の具体例なども挙げられているので、本書を読めば「あのシーンはあれを意識してたのか!」「スリリングな展開の秘訣はこれか!」と、更に深く『ジョジョ』を読み込めるようになると思います。

で、面白いの?

『ジョジョ』が好きということは作者である荒木先生の感性と少なからず一致しているわけですから、本書でオススメされている映画はジョジョファンなら楽しめる可能性が高く、下手な批評家のレビューより遥かに参考になります。それだけでも本書を手に取る価値はあるのではないでしょうか。

とにかく、本書を読めば観たことのない作品は観てみたくなり、観たことがある作品でもまた観たくなること間違いなし。自分の場合、観たことのない作品としては『96時間』『バウンド』『デクスター』などが気になりました。96時間は続編ともども早速借りてきたぐらいで、近々観るつもりです(続編は先生曰く「前作超えはしていない」)。

あとヒロインが「ブスかわいい」「不気味」「天然の超強力悪女」「女優の素性が謎」「悪魔に取り憑かれてるとしか思えない」とボロクソ書かれていた『倦怠』というエロティック映画も違う意味で気になりました(笑)。こちらもいつか観てみようと思います。



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舞城王太郎『JORGE JOESTAR』ネタバレ感想 

先日踏み込んだネタバレなしの感想を書いたが、本格的なネタバレをしないと語れない部分が多々ある作品なので、改めてネタバレ全開で感想を書いておく。

当然ながら読んでしまうと作品の面白さは半減どころではなくなってしまうので、今後読むつもりがあるのならスルーをオススメする。



≫ "舞城王太郎『JORGE JOESTAR』ネタバレ感想" の続きを読む...

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京極夏彦『魍魎の匣』書評(推薦文) 

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『魍魎の匣』は京極夏彦による大作ミステリー小説ですが、内容はとても難解です。どれだけ難解かと言うと、1ページ目から思わず読み飛ばしたくなるぐらい難解。しかもページ数が異常に多く、実に1,000ページ以上。普段読書をあまりしない人は内容以前にそのボリュームに気圧されて手に取るのを思わず躊躇してしまうでしょう。

そんなことを書くと敷居の高い、素人にはおすすめできない作品のように思われるかもしれませんが、断じてそういうわけではありません。確かにのっけから旧仮名遣いが乱舞していたり、突然場面が切り替わったり、何の説明もなしに不可解な文章が挿入されたりと、決して読みやすいとはいえませんし、はっきり言って2/3ぐらい、つまり600ページ以上読んでも頭の中がクエスチョンマークでいっぱいのままですが、この作品の楽しみ方は恐らく”それ”が正解。

意味がわからないということに意味がある、とでも言えばいいでしょうか。全てを理解しながら読み進められる人は多分いません。もしいたらその人は「魍魎」に取り憑かれているのでしょう。ちなみにこの「魍魎」の意味するところも、終盤まで意味不明のまま。

もちろん、最後まで意味がわからぬまま終わる、ということはありません。全ての謎は本当に最後の最後、残り100ページを切ったあたりでようやく明かされます。作品内ではいくつか「事件」と呼べるものが起こるのですが、これまで何の関連性もないように思えた、だからこそ意味不明だった事柄が一気にひとつの線で繋がり、そこでようやく「過去900ページ」の意味が理解できるのです。謎の度合が大きかっただけに、理解できた瞬間のカタルシスは得も言われぬものがあります。

ミステリーの体裁を取ってはいますが、真犯人が誰かとか、トリックは何かといった部分はあまり重要ではない(そこに期待しすぎると「え?」と感じる可能性が高い)ので、とにかく作品全体の雰囲気というか、流れに身を任せていけば最終的に「そうだったのか!」という結論に至ることが出来ると思います。

だから難しそうとかページ数多すぎてしんどそうとか、そういったことで尻込みせず、是非読んで頂きたい。一気に読む必要はありませんし、「どういうことなの……」と感じてもそのまま読み進めてしまってOK。もしも一人で読み切る自信がないのであれば、誰かと一緒に読むのもいいでしょう。そのほうがモチベーションの低下を抑えられますし、作品への没入度もより高まるはずです。

そして最後まで読み終えたら必ず、もう一度はじめから読み返したくなるでしょう。一度目は「何語?」と感じる程わけがわからなかった文章がスイスイ頭に入ってくるのはとても心地良いものです。そんな「わかる快感」を味わうために1,000ページ頑張って読み遂げる価値は十分にあります。

とにかく一般的なミステリーとは大きく趣を異にした作品ですので、名探偵が事件の犯人とその背後にある真相を解き明かしてめでたしめでたし……そんなお定まりの展開に飽きた人には特にオススメの一作です。



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西尾維新『JOJO’S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN』感想 

はじめに

「覚悟した者」は「幸福」である。これはすなわち「あらかじめ未来を知っていれば不幸な出来事に対して身構えることができる」「ゆえに未来を知ることは幸福」という考え方だ。

一見もっともな理屈だが、これには「そんな生き方をして一体何が楽しいのか」という根本的な問題がある。不幸だけならいざ知らず、本来の意味での「幸福」な出来事まで先読みできていたら、そこには何の喜びも感動も生まれないだろう。夢も希望もないとはまさにこの事だ。

あらまし

小説家の西尾維新が手がけた「ジョジョの奇妙な冒険」の小説第2弾『JOJO’S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN』は本編第六部で存在が語られ、プッチ神父が欲したDIOが天国へ行く方法を記したノートそのものを題材とした作品だ。設定としては「承太郎が燃やして破棄したノートを専門家が復元、翻訳を行った複製本」ということになっている。

であるからして、作品は専門家(≒西尾維新)が付け加えた序文を除き、すべてDIOの一人称で語られる。もっとわかりやすくいえば「DIO様の日記帳」である。

日記の内容は大雑把に分けて「過去の回想」「現状の報告」そして「天国へ行く方法」の3パートで構成されている。

過去の回想というのは、父母の話やジョナサンとの因縁について。母を亡くし、父を殺害し、ジョースター家に引き取られ、紆余曲折の末”人間をやめ”、ジョナサン・ジョースターと決闘を行うまでのいきさつが当時の心境も交えて深く掘り下げられている。

現状の報告は文字通り、日記。本編第三部の冒頭からラストまでの出来事がDIOの視点で語られる。DIOがジョースター一行と直接対峙したのは最後の最後なので、「○○を差し向けた」「○○が敗北したらしい」という間接的な記述が大半を占める。

天国へ行く方法では、現在・過去の経験を踏まえた上で「天国へ行きたい理由」や「天国への行き方」、もっと具体的に「どうしたら天国へ行けるのか」について、DIOなりの考察を元に語られている。そもそもこの手記の目的が「天国への行き方を自分なりに体系化するため」であるので、この部分がメインパートといえる。

日記という性質上、それぞれきちんと章ごとにまとめられているわけではない。日によって過去話に花を咲かせたり、手下のスタンド使いについて語ったり、天国へ行くためのキーワードを綴ったり。中には書き進めるうちに感情的になって筆を止めたり、急なアクシデントで突然文章が途切れていることもあったりして、結構とっちらかっている。だからといって読みにくいということはないが、いずれにせよ文学のセオリーである起承転結からは完全にかけ離れた構成となっている。

書評:仮想読者=プッチ神父という問題

この本の著者は西尾維新だが、実質的な書き手はDIOだ。そしてDIOはこの本を「自分の意志を継ぐ友」がいずれ読むことを想定して書いている。友とはもちろん、プッチ神父のこと。作中でもしばしばプッチ神父と会ったという話が出てくる。

プッチ神父はDIOについて詳しいことは何も知らない。どのような環境で生まれ、どう生き、またどう死んでいったのか、それらの知識は持ち合わせていない。だからこそ、DIOはそんな何も知らないプッチ神父にもわかりやすいように生い立ちから専門用語に至るまで「これでもか」というほど丁寧に書き記している。

しかし実際の読者、つまり我々はプッチ神父とは違い、DIOのことは非常によく知っている。歴史の教科書に載ってる偉人の生涯より詳しく理解しているだろう。だから文中説明される大半の物事は「そんなことは知ってる」という今更な内容だ。そこにDIOの主観が込められても、事実を淡々と書き綴るスタンスである以上、大きな驚きはない。

書評:未来を知ることの不幸

冒頭の話題でも触れたが、「未来」を知るということは「感動」を奪うことでもあると思う。それはこの作品にも言える。

誰しもが読み始めた時点で「DIOは死ぬ」「天国=未来」という壮絶なネタバレが脳内にインプットされてしまっている。DIOが死に、本が承太郎の手に渡り、焼却され、プッチ神父は承太郎の記憶を頼りにDIOの意志を継ぎ「天国」へ到達する……それはもう揺るぎない事実だ。この本の結末で実はDIOは生きてましたとか、本は2冊ありました、なんてスリリングな展開はない

もっと言えば最終決戦直前に書かれた部分で急に終わっている。当然だ、そのあと死んでしまったのだから。しかしそのおかげで「え?これで終わり?」という唐突感は否めない。

書評:後発の弱み

「OVER HEAVEN」がもっとも不幸だったのは先に「恥知らずのパープルヘイズ」という作品が存在してしまっていることだ。方やDIO、方やフーゴをテーマにした作品だけに物語的な繋がりは皆無に近いのだが、どちらも「過去の回想」が重要なウェイトを占めているという共通点がある。

しかし両者には決定的な違いがある。それは「OVER HEAVEN」では過去があくまでも過去でしかないのに対し、「パープルヘイズ」は「過去が未来」に大きな影響を及ぼしているという点だ。過去、というのは「本編のワンシーン」という言葉に置き換えたほうがわかりやすいかもしれない。

DIOに未来がないことはみんな知っているが、フーゴの未来は誰も知らない。この差は大きい。

書評:オリジナル設定について

本編に登場しない新たな設定が生み出されるのはこの手の作品の特徴だ。それについて色々意見はあると思うが、自分は作品としてプラスとなるのであれば後付けだろうがなんだろうが大歓迎という立場に身を置いている。

ただオリジナル要素についてはあくまでも「添え物」程度に留めておいて欲しいとは思う。作品の根幹に関わる部分にオリ設定を持ち出されると「何でもあり」になってしまってどうもスッキリしないというか、フェアじゃない気がする。「OVER HEAVEN」は残念ながらそのタイプだった。

この作品でDIOは強烈な劣等感(特にマザー・コンプレックス)の持ち主として描かれているが、それ自体作者が作り出した設定に基づくものなので、キャラクターのイメージと相まってすんなり受け入れづらいものがある。

もっとも、「母親」絡みの諸設定については「ディエゴ・ブランドー」の生い立ちから逆算したものなので完全なる捏造というわけではないのだが。

書評:DIOの「弱さ」を描いてしまったこと

かつて荒木先生が第四部のラスボス、吉良吉影について「幼い頃母に虐待されており、それを父が見て見ぬ振りをしていた過去を描こうと思ったが、敵役に同情の余地は不要だと思ってやめた」と語っていたことがある。

「OVER HEAVEN」でDIOは赤裸々に自身のことを書き綴っている。そこには思わず同情を誘う記述も見られる。日記とは本来ありのままの自分をさらけ出すものなので当然といえば当然なのだが、「そんなDIO様は見たくなかった」という気持ちがないと言えば嘘になる。

「リア充爆発しろ」と言わんばかりに他人をひがみまくるDIO様もそれはそれで面白いし、六部本編でもせっせと模型作りに勤しみ、のんびり「友」とくつろぐ人間くささを見せていたのでそれが本来の”ディオ・ブランドー”なのかもしれないが、絶対的な悪のカリスマで居続けて欲しかったのもまた事実。

「あなたはそのようなことをしてはならんおかたじゃ」というエンヤ婆の口癖は、まさしく正鵠を射ている。

書評:DIO様のDIO様によるDIO様ファンのための一冊

結局のところ、この作品はDIOが自分を真に慕ってくれる者に向けた読み物であるからして、実際の読者も「生粋のDIO様ファン」である必要がある。ファンならばDIOの弱い一面も引っくるめて愛せるはずだし、それこそが真のファンというものだろう。

そういった「ファン視点」で注目するならこの作品は見所が満載。前述のひがみまくる一面に関しては成功したスピードワゴンに対し

――財団などを築けたところを見ると、所詮あの男も、悪ぶってはいても、『受け継ぐ者』か『与える者』だったということか。メッキが剥げたな、馬鹿馬鹿しい。

とのたまうくだりが最高だ。何だメッキって。こんな矮小な考え方で「世界」の支配者を気取っているのだから笑える。

また終盤の

――ヴァニラ・アイスに起こされた。寝ていたところを起こされた。

という一文も見逃せない。二回言うということはよっぽどウザかったと見える。このように「なんでそんなことまで書いてるの?」という記述が多々見られるのはこの作品の魅力だろう。

他にも「ホリィ助けるって言えば承太郎たち許してくれるんじゃね?」と和解を妄想してみたり、負けが込んで「わたしの行動は全て裏目に出る」とふてくされてみたり、「エンヤ婆がもう少し若かったら子供を仕込んでやるのに」と衝撃的な告白をしてみたり、日記の端々で可愛らしい一面が垣間見られる。これぞまさしくファン必見、である。

総評

そもそもこの作品は「原作に登場したアイテム」を再現したものなので、言わば一種のファングッズといえる。そういう意味では上で述べたような一般的な小説としての評価は正しくないかもしれない。オリジナル設定に関しても、逆にそれがなかったら本当に原作をただなぞっただけの内容になってしまうのでやむを得ないとも思える。

ただ自分は西尾維新の作品を読んだことがないのだが、「西尾維新が書くジョジョ」ということで期待していたファンにとってこの作品はどうなのだろうか。他作品を読んだ事がないので断定は避けるが、正直こういったスタイルだと誰が手がけても似たような内容になってしまい、作者の「持ち味」が活かせない気がするのだが……。仮に自分が作者のファンなら「パープルヘイズ」のような正当派のノベライズが読みたかったと思う。

とりあえず、西尾氏のDIO様が好きすぎてたまらないという気持ちが良く伝わる作品だったことは確かだ。そして同じようにDIO様が好きすぎてたまらないという方であれば十分満足しうる内容だと思う。ジョジョファンというよりディオファンに向けた作品、それが『JOJO’S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN』である。



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上遠野浩平『恥知らずのパープルヘイズ 』を読み終えての感想(※ネタバレなし) 

人生においてもっとも後悔する瞬間は道を「間違えた」時ではなく、道を「選ばなかった」時ではないでしょうか。

パンナコッタ・フーゴという男はまさに「選ばなかった人間」。『ジョジョの奇妙な冒険』の登場人物は善であれ悪であれ皆一様に「己の信念」を持って生きていますが、フーゴからはそういった「内に秘めたる強い意志の力」が全く感じられません。それは己の写し身ともいえるスタンド「パープル・ヘイズ」をまともに制御できないことからも明らかです。

なまじ頭の回転が早いばかりに物事に対して常に「正解」を求め、いざという時に尻込みしてしまう。だからこそミスタやアバッキオ、果てはナランチャまでもがブチャラティと運命を共にする『覚悟』を決めた”あの場”で「出会ったばかりの女のために命を賭けるなどどうかしてる」と一人正論を並べ立て、足を踏み出すことができなかったのです。

もしあの時の彼が確固たる信念に基づいてブチャラティと袖を分かったのであったならば、それほど後悔することもなかったと思います。ひょっとすると当初の構想通り、敵としてジョルノ達の前に立ちふさがることもあったかもしれません。

しかし彼の場合は敵になることすら出来ず、物語から完全に姿を消してしまいました。ブチャラティの元を離れたことで結果的に死の運命に巻き込まれることはありませんでしたが、夢や希望を失い、かつての仲間に顔向けもできない彼は果たして「生きている」といえるのでしょうか。

『恥知らずのパープルヘイズ』はそんな人生の大切な岐路で一歩踏み出せなかった男・フーゴが悔やみ、迷い、そして再び踏み出すまでの道程を綴った物語です。

人間誰しも大なり小なりフーゴのように「あの時ああしてれば」と後悔することがあるはず。ゆえに非常に感情移入しやすく、物語の主人公としてはこの上ない逸材といえます。ラストは思わず目頭が熱くなってしまいました。

チームを離脱したフーゴがその後どうなったかというのは誰しも気になるところでしょうし、著者の文章力および「ジョジョ力」も相まって、まるで漫画を読んでいるかのようにスイスイ読み進められます。

予備知識なしで読んだほうが絶対楽しめるのでネタバレは避けますが、五部のキャラはもちろん他の部に出てくるあんな人やこんな人、あの「アイテム」も登場してジョジョラーならページをめくる度にニヤニヤすること間違いなし。

非常に評判が良かったので相当ハードルを上げて読み始めたのですが、余裕でそのハードルを越えてきました。小説をオフィシャルストーリーと認めるのは賛否あるところだと思いますが、この作品に関しては正式に「黄金の風の後日談」と認定しても誰も文句言わないのではないでしょうか。

第五部が特に好きな方はもちろん、ジョジョが好きな万人にオススメしたい作品です。普段小説なんてを読まないという方も物怖じせず、是非「一歩踏み出して」みてください(笑)。絶対、後悔しませんから。

内容とは無関係ですが、カバーは鮮やかな銀色でカバー下には別イラストが描かれています。
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擦れて傷付きやすいカバーなので美品を求める方はネットで購入したほうがいいかもしれません。

お礼

にゅーあきばどっとこむ』様、『よつばとフィギュア』様、

スタチューレジェンド 第7弾 ジョジョの奇妙な冒険 第四部 虹村形兆&バッド・カンパニー レビュー

ご紹介頂きありがとうございます。



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『伝わる・揺さぶる!文章を書く』ための方法 

上手な文章の書き方について学ぶために以下の本を買いました。

山田ズーニー 『伝わる・揺さぶる!文章を書く』

先日購入した『文章力の基本』が「読み手に違和感を抱かせない正しい文法の使い方」についての指南書だったのに対し、この本には「相手に伝わる、人を惹き付ける文章を書くためにはどうしたらいいか」という、言わば”文章を書く上での心得”が記されています。

いくら英文法を学んだところでアメリカ人と円滑なコミュニケーションが図れるとは限らないのと同様、どれだけ正しい文章が書けるようになっても「上手く伝える」という部分が欠落していたら実践では何の役にも立ちません。

だからこそ、「具体的にどうすりゃ良い文章書けるのよ?」という疑問にぶち当たっている人は是非この本を読むべきです。ダテに「4年連続Amazon.co.jpベストセラー入り(と、帯に書いてある)」はしていません。

良い文章を書くために必要なこと

この本を一通り読んで自分なりに感じた「文章を書く上で最も大切なこと」は、ズバリこの一点でした。

  • 相手の立場になって物を考える。

人間関係を築く上での基礎ともいえる単純な思考法ですが、だからこそ文章を書く上でも大切。

本の中では「きちんと機能する(=良い)文章」を書くために抑えるべき点として

  1. 意見(言いたいことはなにか)
  2. 望む結果(だれがどうなることを目指すのか)
  3. 論点(問題意識はどこに向かっているか)
  4. 読み手(読み手はどんな人か)
  5. 自分の立場(相手から見て自分はどんな立場にいるか)
  6. 論拠(相手が共感・納得する根拠はあるか)
  7. 根本思想(あなたの根本にある想いは何か)

上記7つの要件が上げられていますが、いずれも相手の立場になって考えれば当然抑えてしかるべきポイントだと判ります。

何が言いたいのかわからない取り留めのない文章を書いてしまう人は、ただ自分の好きなことを好きなように書き散らかすだけで「誰に」「何を」「どうして」伝えたいのかが明確でないのだと思います。少なくとも自分は、そう(だから勉強したいのです)。

仮想読者を想定する

少し話は逸れますが、かつて藤子不二雄A先生が『まんが道』の中で自身を投影した主人公にこんなことを言わせていました。

「僕はいつも一人の仮想読者を想定するんです!小学四年生、背の小さい内気な性格の少年です!僕はいつも、彼に話しながら描いているんです。(中略)そして、その彼が僕の漫画を読んでいる姿を想像するんです。僕の想像の中で彼の手応えがあった時…ああ!漫画を描いてよかったな…と、思うんです!」

さすが、A先生はいいこといいます。この「仮想読者を想定する」というのは何も漫画に限った話ではなく、ライティングを含め自己を表現する分野全てで有効な方法だと思います。誰に読ませたいでもなく漠然と書いた文章というのはぼんやりとして取り留めのない「駄文」になりがちです。

逆にどんな人に読んでもらいたいかがはっきりしていれば、おのずと書くべきことや伝えたいことが明確になり、実際の読み手からの共感や納得も得られやすくなるでしょう。

つまり、仮想読者を通して「読み手の立場になる」という事が重要なのです。

読んでもらえなきゃ意味がない

わかりやすくて読みやすい文章を書くことは大切ですが、そのためにはまず「読んでもらえる」という大前提が条件となります。そしてそれがある意味最大の難関。

身も蓋もない言い方をしてしまうと名の知れた文筆家やタレントでもない一般人が書いた文章なんて大半の人にとってはどうでもいい”道端の石コロ”に過ぎないわけで、そんな”石コロ”を拾ってもらうためには人目を惹くための「何か」がどうしても必要です。

「何か」とは何か、どうすればみんなに読んでもらえる文章が書けるか……それがわかったら本なんか読まないよ、こっちが教えて欲しいぐらいだよって感じなのですが(笑)、抽象的表現をするならやはり「個性」だと思います。

むしろはみだせ!

個性、すなわち「自分らしさ」の重要性を示す例として、本の中に以下のような例えがありました。

Q.あなたが好きな人にプレゼントをあげるとしたら次のどの方法を採りますか

  1. 自分のあげたいものをあげる
  2. 相手に「何が欲しい?」と聞いたり、趣味を下調べをして欲しがっているものをあげる
  3. 相手のこれまでの趣味にない、新しい引き出しを開けるようなものをあげる

1番は「あげる側」が類い稀なるセンスを持ち合わせていたり、「もらう側」が「あなたからのプレゼントなら何でも嬉しいわ」と考えていれば別ですが、大抵はただの自分勝手。文章を書くということに置き換えると「好きなことを好き放題書く」というのがこれに当てはまります。タレントのブログが内容如何に関わらず人気を博すのはまさに「あなたからのプレゼントなら何でも嬉しい」と思う人が多いからでしょう。

2番は上でも書いたように、相手の気持ちに立って物を考えるということ。欲しがっているものをあげる、つまり読み手の読みたいものを提供する、そう考えれば最も理想的な選択といえます……が、ここにはひとつの落とし穴があります。それは「相手が欲しがっているものは仮に自分があげなくても手に入れたかもしれない」ということ。

型にはまった当たり障りのない内容では人の心を真に掴むことはできません。極端な話、それだったら「わざわざ改めて自分が書く必要もない」わけで、読み手としても「わざわざこの人の文章を読む必要もない」わけです。

だからこそ3番、相手の新しい引き出しを開けるような「自分らしい」文章を紡ぐ事こそが人の心を「揺さぶる!」ために大切ではないでしょうか。それによって時には批判されることもあるでしょうが、誰からも批判されない文章なんて誰の心も打たないことの裏返し。何事もリスクを恐れていては前に進むことなんて出来ません。

相手の立場になる+個性=最強

最初に出した結論に戻りますが、とどのつまり「良い文章を書く」ためには「相手の立場に立つ」、これに尽きると思います。その上で個性や独自の着眼点を用意し、人を惹き付けられれば理想的な文章の完成です。

「でも具体的にどうすれば良いかわからない」という人は今回紹介した本を読めば「取っかかり」が掴めるはず。メールの書き方から就職活動で役立つ自薦文まで、文章を書く上での「思考法」が様々な具体例を交えながら詳しくわかりやすく解説されています。

堅苦しさは全くなく、スラスラ3時間程度で読めてしまうので文章読むのが苦手な方でもおすすめです。……もっとも、文章書く上で「文章を好きになる」ってのは大事だと思いますけど(笑)。

ちなみに自分は全く存じ上げなかったのですが、著者の山田ズーニーという方は糸井重里氏のサイト『ほぼ日刊イトイ新聞』でも「おとなの小論文教室。」というコラムを連載している、文章教育の分野では名の知れた女性だそうです。



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『文章力の基本』という本を買いました 

最近お仕事で文章を書く機会が増え、「文章術」を鍛えたいと考えるようになったので本屋でこの本を買ってきました。

阿部紘久 『文章力の基本 ~簡単だけど、だれも教えてくれない77のテクニック~』(定価1,300円)

阿部という方がタイトル通り「文章力を高めるためのくそみそ基本テクニック」を77の項目に分けて解説している……のですが、正直期待外れというか求めていたものとは異なる内容でした。

とにかく、書いてあることが基本的過ぎます。そういうコンセプトの本だというのはわかりますが、いくらなんでも「てにをは」や修飾語の使い方なんて小学生レベルの解説は必要ありません。基礎中の基礎としてサラッと書かれているならともかく、全編通してそんな感じ。

全く参考にならなかったわけではないんですけどね。例えば

  • 話の内容が自然に繋がっていれば、つなぎ語を入れなくても読み手は理解出来る
  • 前置きをダラダラ並べずに核心から入る
  • 具体的なエピソードから書き始めると共感を得られやすい
  • 箇条書きを活用すればすっきりして読みやすくなる

といった項目にはなるほどと感心し、これから意識していこうと思いました。

ただそういった実用的な指南は全体の一割にも満たず、具体的な解決法を示すでもなく読み手に丸投げしている箇所も多いため全体として「薄い」印象は否めません。

「短文」の書き方に終始していて長文、すなわち文の構成テクニックについてほとんど書かれていないのも残念でした。文章を書く上で最も重要で、かつ最も難しいのが構成力だと思います。一応「同じ話はまとめて書く」ぐらいの指南はありますが、これもまた基本的な内容ばかりであまり役に立ちません。

話し言葉や砕けた表現を必要以上に敵視しているのも実用性に欠けると感じた点のひとつです。なんでこの手の本を書く人はそういう俗語的な言い回しをことごとく排除しようとするのでしょう。

遊びの許されない堅いビジネス文書で「わりと」やら「なので」といった言葉はもちろん御法度ですが、そうでない場合あまり型に嵌りすぎた文面は逆に読み手の共感を妨げる原因となるのではないでしょうか。阿部さんはファミレスにタキシード着て行くつもりですか?

かといってビジネス用途としても具体的な文例が載っていないのであまり役に立ちません。その手の知識を得るのであれば専門書を読んだ方が良いと思います。

本の中で「そうしろ」と書かれているので言葉を濁さずハッキリ断定して言わせてもらうと、この本はある程度文章を書き慣れた人であればわざわざ読むまでもありませんね。

スラスラ読み進められるので全く文章を書いたことがない人が苦手意識を克服するためのきっかけとしては良いかも知れませんが、少なくとも自分にとって1300円の価値はありませんでした。立ち読みで十分。こんなことなら同じお金でLEE30倍カレーをあと4個買えば良かったと少し後悔しております。

何かもっと他に実用的で読みやすい、オススメの本はないものでしょうか。



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