京極夏彦『魍魎の匣』書評(推薦文)

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京極夏彦『魍魎の匣』書評(推薦文) 

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『魍魎の匣』は京極夏彦による大作ミステリー小説ですが、内容はとても難解です。どれだけ難解かと言うと、1ページ目から思わず読み飛ばしたくなるぐらい難解。しかもページ数が異常に多く、実に1,000ページ以上。普段読書をあまりしない人は内容以前にそのボリュームに気圧されて手に取るのを思わず躊躇してしまうでしょう。

そんなことを書くと敷居の高い、素人にはおすすめできない作品のように思われるかもしれませんが、断じてそういうわけではありません。確かにのっけから旧仮名遣いが乱舞していたり、突然場面が切り替わったり、何の説明もなしに不可解な文章が挿入されたりと、決して読みやすいとはいえませんし、はっきり言って2/3ぐらい、つまり600ページ以上読んでも頭の中がクエスチョンマークでいっぱいのままですが、この作品の楽しみ方は恐らく”それ”が正解。

意味がわからないということに意味がある、とでも言えばいいでしょうか。全てを理解しながら読み進められる人は多分いません。もしいたらその人は「魍魎」に取り憑かれているのでしょう。ちなみにこの「魍魎」の意味するところも、終盤まで意味不明のまま。

もちろん、最後まで意味がわからぬまま終わる、ということはありません。全ての謎は本当に最後の最後、残り100ページを切ったあたりでようやく明かされます。作品内ではいくつか「事件」と呼べるものが起こるのですが、これまで何の関連性もないように思えた、だからこそ意味不明だった事柄が一気にひとつの線で繋がり、そこでようやく「過去900ページ」の意味が理解できるのです。謎の度合が大きかっただけに、理解できた瞬間のカタルシスは得も言われぬものがあります。

ミステリーの体裁を取ってはいますが、真犯人が誰かとか、トリックは何かといった部分はあまり重要ではない(そこに期待しすぎると「え?」と感じる可能性が高い)ので、とにかく作品全体の雰囲気というか、流れに身を任せていけば最終的に「そうだったのか!」という結論に至ることが出来ると思います。

だから難しそうとかページ数多すぎてしんどそうとか、そういったことで尻込みせず、是非読んで頂きたい。一気に読む必要はありませんし、「どういうことなの……」と感じてもそのまま読み進めてしまってOK。もしも一人で読み切る自信がないのであれば、誰かと一緒に読むのもいいでしょう。そのほうがモチベーションの低下を抑えられますし、作品への没入度もより高まるはずです。

そして最後まで読み終えたら必ず、もう一度はじめから読み返したくなるでしょう。一度目は「何語?」と感じる程わけがわからなかった文章がスイスイ頭に入ってくるのはとても心地良いものです。そんな「わかる快感」を味わうために1,000ページ頑張って読み遂げる価値は十分にあります。

とにかく一般的なミステリーとは大きく趣を異にした作品ですので、名探偵が事件の犯人とその背後にある真相を解き明かしてめでたしめでたし……そんなお定まりの展開に飽きた人には特にオススメの一作です。


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